2019年07月08日公開

2019年07月08日更新

公正世界仮説とは?この考えを信じる人の心理や問題点を解説

公正世界仮説という言葉をご存知ですか?公正世界仮説とは、簡単に言うと良いことや悪いことが起こるには理由があると考える認知バイアスのことです。こうした公正世界仮説を信じる人達にはどういう心理や問題点があるのか心理学的な視点で解説します。

公正世界仮説って知ってますか?

公正世界仮説という言葉をご存知でしょうか。最近SNSなどで目にすることが増えてきた言葉ですが、日常生活ではなかなか使う機会のない馴染みもない言葉ですよね。 今回は、この公正世界仮説の解説や特徴や、公正世界仮説を信じる人の問題点についてご紹介します。また、より詳しく知りたい方のためにオススメの書籍もご紹介します。

公正世界仮説の意味

公正世界仮説とはどういった意味なのでしょうか。 まず前提として、一般的に人間は理由もない出来事を嫌がりやすく、不安になりやすい傾向があります。 そのため、なにかしらの出来事には理由や原因があってほしいと思いやすいのです。 また、自分の頑張りには結果が伴ってほしいと願っています。

こうした思いから、良いことをしたら良いことが起こる、悪いことをしたら悪いことが起こる、といったような秩序のある法則を信じたい気持ちになりやすいのです。 これを認知バイアスのひとつで、「公正世界仮説」と言います。 つまり、簡単に言うと、出来事には必ず理由や原因がある、という考え方だと言えます。 公正世界仮説は日本だけにある考え方ではなく、世界中の人々に見られる考え方です。決して珍しい考え方ではななく、身近に存在している考え方であることを知っていただければと思います。

公正世界仮説に似た意味のことわざ 「因果応報」

善い行いも悪い行いも、全て自分の結果となって返ってくるもので、結果は自分が作り出している、という意味です。元々は仏教の用語です。 自分の行いが全ての結果に繋がっているのだから、自分の行動をあらかじめ見直しなさいといったような説法としても使われています。

公正世界仮説に似た意味のことわざ 「自業自得」

こちらの言葉は悪いことをしたのだから、酷いめに遭うのは当然のことだ、という意味です。こちらもまた元々は仏教用語でした。 前述の因果応報と違って、主に悪い行為を注意するために使われてきました。 つまり、悪いことはするべきではないという意味で用いられると言えるでしょう。

公正世界仮説の例

公正世界仮説の例としてよく言われるのは、「努力は必ず報われる」という言葉があります。努力を続けていれば、それにともなった結果がやってくるという考え方です。 また「正義は勝つ」「信じるものは救われる」という良い行いをすれば良い結果が返ってくるという言葉もあります。 一方、「悪いことをすれば罰が当たる」という考え方もまた、悪い行いをすれば悪い結果が返ってくるという意味合いでつかわれます。 これらは全て、公正世界仮説にのっとった考え方です。

公正世界仮説がもたらす効用

このような公正世界仮説の考え方を信じることは、どういった効果をもたらすのでしょうか。 名前は難しく慣れない感じがしますが、実は一般的で大変身近な効果を持った考え方です。 では、この項目では公正世界仮説がもたらす効用についてご紹介します。

モチベーションを上げることができる

公正世界仮説の考えにのっとれば、良いことをすれば良いことが返ってくるわけですから、「努力は必ず報われる」と考えることができます。 例えば、「頑張ったって成果が出ない」「何も努力してない人が勝つ」のが当たり前の世界だと思ってしまったら、努力したって無駄だ~と思ってしまって、何事にもやる気が起きなくなってしまいますよね。 しかし、頑張れば頑張るだけ成果が出るなら、頑張りがいもありますし、続ける気持ちにもなります。つまり、公正世界仮説を信じることで、努力を続けるモチベーションを継続することができるのです。

犯罪などの悪事を働かなくなる

公正世界仮説の考え方にのっとれば、人は悪いことをしなくなる、と考えることができます。なぜなら、公正世界仮説の考え方では、悪いことをすれば自分に悪い結果が返ってくるからです。 犯罪をしたら当然捕まりますし、子供が危険ないたずらをしたら叱られたりしますよね。 なので、人は自分に悪いこと(捕まるとか叱られるとか)が起こらないように、進んで犯罪を起こしたりはしませんし、自ら危険なことをしなくなっていくのです。 多くの人が無意識に公正世界仮説を信じていることや、警察や司法といった秩序を守る人たちがいることが、この考え方を当たり前の考え方として浸透させ、安定した社会を維持していると言えるかもしれません。

安心できる

公正世界仮説を信じることの最も大きなメリットは安心感を得られることです。 混沌とした理不尽な不安定な社会よりも、秩序にもとづいた基準が明確で安定した社会の方が暮らしやすいと思いませんか? 公正世界仮説は何度もお伝えしている通り、良いことには良い、悪いことには悪いといった公正な結果が返ってくる社会だと信じる考え方です。なので、その明確な判断基準がある考え方に安心感を得ることができるのです。 つまり、こうした考え方を信じることで「悪いことをしていなければ、自分に悪いことは起きない」と考えやすくなります。そのため、外出して友人と会ったり、料理などの作業をしたりといった日常生活を安心して送ることが出来ているのです。

公正世界仮説を信じる人の特徴

公正世界仮説を信じることには、一定のメリットがあることをお伝えしました。 基準が明確で秩序立った社会であり、安心して日常生活を送ることが出来るようになる、という効用は非常に魅力的です。 では、そうした公正世界仮説を信じている人には、どのような人が多いのでしょうか。 この項では公正世界仮説を信じる人の特徴をご紹介します。

真面目な人、秩序を守る人

無意識的に信じている人も含めて、多くの公正世界仮説を信じている人たちは、真面目で勤勉な人が多いです。人当たりも良く、犯罪もおかしたことがない善良な方が多いと言えるでしょう。 また、主観的幸福感が高い人に多いとも言われています。 主観的幸福感とは「自分は幸せである」と感じる度合いです。極端に幸せでなくても、比較的不自由なく生活できている方は当てはまっていると考えられます。 それなら誰でも当てはまるじゃん!と思われるかもしれませんが、その通りなのです。 それぐらい公正世界仮説のような認知バイアスは誰でも持っていることが多い、ということです。

未来志向の人

未来志向の人は、まだ起こってない未来に向けて希望をもって進める人、未来に向けて前進する人、そんなイメージですが、こうした人たちも公正世界仮説を信じている傾向があります。 なぜなら、前項でもお話した通り、公正世界仮説では「努力は必ず実を結ぶ」と考えることができるため、モチベーションを維持しやすく、未来には良い結果が待っている、と思うことができるからです。 言い換えると、努力家であったり、頑張り屋であると言え、またそれを実現するための能力を持ち合わせている人は信じやすい傾向があると言えるでしょう。

公正世界仮説を信じる人の心理

上記にて、公正世界仮説を信じやすい人の特徴をご紹介しました。 簡単に善良で真面目で、未来に向けて希望がある、そんな人達に多い考え方だとまとめました。 この項ではもう少しその特徴を深掘りして、公正世界仮説を信じる人にはどういった心理が働いているかをご紹介したいと思います。

幸福感や満足感、達成感を得たい

結果が公正な社会を信じる人ほど、真面目で幸福感が高いことはお伝えしましたが、そういった人たちは自分の幸福感や満足感を維持したいと思う心理があります。 例えば、努力して思った通りの満足な結果が出せた経験があると、また次の目標に対して努力したいと思えるようになりますよね。また頑張ろうかな、という気持ちになります。 これは、努力することによって得られた満足感や幸福感、達成感をもう一度味わいたいという心理が働いており、公正世界仮説はこうした気持ちを後押しする力があると考えられます。

心の防御をしている

公正世界仮説を信じる考え方は、先程もお伝えしたように安心感に繋がります。 どういうことかというと、善には善が、悪には悪が返ってくるという考え方が発展し、「悪いことをしていなければ、悪いことは起こらない」と考えられるわけです。 自分自身に落ち度がなければ、不幸なめには合わないと考えてしまうため、世の中の理不尽な出来事から目を背けがちになってしまいます。 理不尽な出来事が起こりうるとを認めてしまうと、世界の公正さを否定することになってしまい、自分の安全な生活をおびやかすことに繋がってしまいます。そのため、自分の安全感を守るために、不公平な出来事を捻じ曲げて解釈しやすくなってしまう危険性があります。

公正世界仮説がもつ問題点

以上に、公正世界仮説を信じる人の特徴をご紹介しました。 公正世界仮説は一見するとポジティブな考え方ですが、問題点もある考え方なのです。 なぜなら、世界は必ずしも公平ではない時もあるからです。世の中には運や偶然といった不確定な要素も存在しています。しかし公正世界仮説を信じていると、そうした存在に否定的になってしまいやすいのです。 この項では、具体的にどのような問題点が生じるかをご紹介します。

問題点1:被害者に対するいじめが起きやすい

例えば、恋人関係ではない男女が2人っきりで食事に出かけたところ、女性は深酒させられて男性に襲われた、といったような性犯罪が起きた時を想像してみてください。 あなたはどんな感想を抱きますか? 「2人で出かけた女性に危機感が足りなかったのでは」「お酒を飲む方が悪い」と被害者の女性を批難する人たちを見聞きしたことはありませんか。 このように被害者を責める言動が出てしまうのは、公正世界仮説を信じているからこそ表れる言葉だと考えられます。

公正世界仮説は因果応報のような考え方をしやすい認知バイアスです。 そのため、先程の例えで言うと、「女性に悪い結果が起きているならば、それは女性が悪い行いをしたからではないか」と逆説的に考えてしまいやすいのです。 フラットに考えれば、被害者に害を与えた加害者が悪いのですが、何故、公正世界仮説を信じる人は被害者を責めてしまうのでしょうか。 それは、被害者に落ち度がないとすると、その事件は理不尽であり、世界は秩序に則った公正な世界ではなくなってしまうからです。そのため、自分の安心感を守るために前述した心の防御が働き、被害者を責めてしまいやすくなってしまうのです。

問題点2:自己責任のせいにしてしまう

例えば、たくさん勉強したのにテストで良い結果が出なかった。あるいは、血の滲むような努力を重ねてきたのにスポーツで負けてしまった。そうした経験はありませんか? そうした結果を出せなかった人たちに「努力が足りなかった」と言うことがあります。 また、お金がなくて苦しんでいる人に対して「節約が足りてないのでは」「転職したらいいのに」と、より一層の努力を促すといった例もあります。 これらは公正世界仮説から生じる自己責任のせいにするという問題に当たります。

ここで言う自己責任とは、「困った状況や不当な結果は、全て、困っている当人がやってきたことのせい」と考えてしまうことです。 結果が振るわなかったのも、本人の努力が足りなかったせい。お金がないのもの、本人が工夫しなかったせい。 そのように考えることで、世界の公正さ、それに伴って自分を守ろうとするのです。 努力が実らなかったり、理不尽な環境を他者の自己責任とすることで、自分には関係ない事柄と心を防御してしまいやすいのです。

公正世界仮説に関するオススメ書籍2選

より詳しく公正世界仮説を知りたい方には以下の書籍がオススメです。 この他にも社会心理学を全般に扱った本や犯罪に関わる書籍にも、公正世界仮説を扱った内容や、公正世界仮説によって問題となった事件について扱った本がありますので、興味があれば探してみてくださいね。

なぜ被害者より加害者を助けるのか/後藤啓二

被害者と加害者の扱いの差について強く指摘している本です。 被害者が様々な制度の中で守られていない現状をどうにかしなければならない、と述べられています。 しかし、この本が出版されてから制度は少しずつ変化してきており、当時とは法整備が変わってきている点は注意して読んでください。

日本人の公正観-公正は個人と社会を結ぶ絆か-/大渕憲一

日本における公正観について社会学的視点から述べた研究書籍です。 公正さを判断する社会的な仕組みや、それらはどのように決まるのかという論点を、集団との関係性には集団と人との絆が関わっているのではないか、という説を述べています。 かなり専門的な書籍ですが、公正観とはなにかという点について深く知ることができます。

公正世界仮説は必要な考え方だが、必ずしも正しくはない

公正世界仮説は物事の偏った見方(認知バイアス)のひとつです。 秩序のある安定した社会をそこで暮らす人達が目指すことで、悪事は減少し、善良な行いをし、目標に向かって進む社会を作っていくことができます。 しかし、そうした社会を目指すあまり、理不尽な出来事が起きた時に被害者を責めたり、環境に苦しんでいる人たちを責めるのは、本来適切ではないのです。 この世界には運や偶然という不確定な要素が存在しています。なので、時には理不尽なこと、不運なことが起きてしまう事実に目を向け、弱った人たちに手を差し伸べられる社会になっていくことが大切です。

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ライター

小川きいろ

小川きいろ

病院に勤める臨床心理士・公認心理師です。 日常的なこころの悩みを中心に心理関係で記事を書かせていた...

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